航空機騒音の測定
 航空機騒音の測定は、環境基準の達成状況の監視、騒防法に基づく騒音区域の把握など目的は測定主体によって異なることはありますが、基本的には、「航空機騒音に係る環境基準」(昭和48年12月27日環境庁告示第154号)とそれを補足する「航空機騒音監視測定マニュアル」(昭和63年7月環境庁大気保全局、以下「マニュアル」と記します)に沿って行われています。

 成田空港の場合、空港整備法第二条で定義される第一種の民間空港となっており、マニュアルでは、環境基準に従い、原則として1週間継続して測定を行うタイプTの飛行場として定義されていますが、通年測定点(固定の測定局を設け、自動測定装置を使って年間を通して継続して騒音を測定し、航空機騒音の年次的推移を把握することを目的とします)を設け、年間を通じての総合的な騒音暴露を評価し、監視しています。

 また、暗騒音の影響をできるだけ受けずに測定できるように、暗騒音から10dB以上大きい航空機騒音だけを測定するようにしています。

 年間のWECPNLは、1日毎のWECPNLを求めた後、その値を1年間分パワー平均して求めています。
測定点
 測定に用いる騒音計は、計量法の検定を受けているものを使用しています。

 騒音計の周波数補正特性及び動特性は、環境基準の測定方法に従い、A特性・SLOWとしています。もちろん、校正の際はFlat特性で行っています。

 騒音計のダイナミックレンジ(設定レンジの切り替えを行わずに計測できるレベルの範囲量)は70dB以上のものを使用しています。
レベル校正器
 定期的にレベル校正器を使用して、騒音計の精度を保っています。レベル校正器としては、校正音源を使用してマイクロホンからレベル変換器までの測定系全体を校正する音響校正式のピストンホンを用いています。ピストンホンの精度は±0.2dB以内に保たれています。
航空機騒音の評価単位
 日本における航空機騒音の評価単位は、ICAOによる国際基準を一部簡略化したWECPNLが用いられており、次式のとおり表されます。
 
とは、1日のすべてのピークレベルをパワー平均したものをいいます。
:0時〜7時での航空機騒音発生回数(0時<7時)
:7時〜19時での航空機騒音発生回数(7時<19時)
:19時〜22時での航空機騒音発生回数(19時<22時)
:22時〜24時での航空機騒音発生回数(22時<24時)
加重等価平均感覚騒音レベル
WECPNL
(Weighted Equivalent Continuous Perceived Noise Level)
 1969年、国際民間航空機関(ICAO)により、国際的な航空機騒音に係る基準として提案されました。WECPNLは多数の航空機による長期連続暴露の尺度として提案されたものです。なお、ICAOの提案した航空機騒音の尺度としてはEPNL、TNEL、ECPNL、WECPNL等があります。
 
PNL
(Perceived Noise Level)
 ジェット機の騒音は通常の騒音に比較して、その高域成分によって実際の騒音レベル(dB(A))よりもやかましく聞こえることに着目した評価法で、K.D.Kryterにより提唱されました。騒がしさを感じる高音域周波数に重み付けをしたのがnoy曲線で、オクターブごとの騒がしさをnoyという単位で表し、1kHzを中心周波数とする1/1オクターブバンドでの40dBを1noyとしています。各バンドのnoyからPNL(dB)を算出します。PNLは現在、航空機騒音の測定単位としてISOにも登録されています。また、dB(A)のように騒音計に組み込んでPNLを直読することが国際的に規格化され、dB(D)という単位が決められています。PNLはもっぱらジェット航空機騒音の単位として使われますが、ジェット騒音のスペクトルはほぼ同一の分布を持っていますので、ジェット騒音のdB(A)を測定して13を加えると、PNLの近似値が得られます。ただし、プロペラ機やターボプロップ機については、機種によってPNLとdB(A)の差がジェット機の場合と異なることもあります。
 
EPNL
 航空機騒音証明制度で採用され、1機の通過による騒音暴露を表します。簡略化されている、近似値を求める式は以下の通りです。
 
画像:ピークレベル(dB(A))
13:補正値 航空機のエンジン、測定周波数補正(dB(A)かdB(D)か)によって変化する定数。上の式の場合はdB(A)なので13となります。dB(D)の場合は7になります。
d:継続時間補正のため、その最大値より10dB低い時間の長さ。
 
TNEL
 ISOでは画像としています。航空機騒音の総暴露量の表記方式です。以下の式によって定義されています。
 
ここで、
:規準化のための定数で、10秒です。
:1秒です。
=10
LEPNi:i番目に発生したEPNL値。
したがって、以下の式で表されます。
 
ECPNL
空港周辺の土地利用計画に関しての国際的相互比較と情報交換のための参考の騒音暴露単位として勧告されたもので、一定時間内の多数の航空機騒音による騒音の暴露を示します。
 
ここで、T0 は考慮している時間で、日中、夜間、1日、特別な期間、1年などになります。t0 は1秒です。
WECPNL
WECPNLはECPNLに騒音発生時刻及び季節による補正を加えた尺度として提案されました。時間の分け方は大きく2通りあって、日中(7〜22時)と夜間(22〜7時)の2分割法と、この間に夕刻(19〜22時)をはさんだ3分割法があります。また、季節補正として、ひと月のうち20℃以上の時間が通常100時間より少ない月は-5、25.6℃以上が100時間を超える月には+5、20℃以上が100時間を超え、25.6℃以上が100時間より少ない月は補正なし、としています。この補正は、地域の実状に応じた時間区分を定めています。年間WECPNLは、各季ごとのWECPNLのエネルギー平均で表されます。このように、ある地点でのWECPNLの値は、ある一定期間内に発生した航空機騒音の総暴露量を平均化して表すもので、エネルギー加算を基本にしています。
国内の評価と測定の目的
 国内の航空機騒音に対する環境基準(以下、「環境基準」)の尺度はICAOの提案したWECPNLを簡便化した形で採用しています(前述した式を参照してください)。

 航空機騒音の環境基準は、住居地域で70WECPNL以下、その他の地域で通常の生活を保全する必要がある地域は75WECPNL以下と定められていて、成田空港周辺では空港敷地と工業専用地域を除く地域に、環境基準が適用されています。

 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(以下、「騒防法」)により、第1種地域(75WECPNL以上)では住宅の騒音防止工事への助成、第2種地域(90WECPNL以上)では住居移転の補償、第3種地域(95WECPNL以上)では緑地帯などの緩衝地帯の整備を空港設置者が行うことになっています。

 空港周辺の自治体が騒音調査を行う目的としては、「環境基準」の達成状況の確認と、「騒防法」での騒音防止工事への助成地域などの線引きの妥当性を確認することにあります。
海外の評価単位
 ドイツ、イギリスはLAeq(*1)を、アメリカはLdn(*2)を採用しています。その他、カナダではNEF(*3)、オーストラリアではANEF、フランスではIP、ノルウェーではEFNが用いられています。
(*1) LAeq
(Equivalent Continuous A-weighted Sound Pressure Level)
日本では等価騒音レベルと呼んでいます。JISでも定義されています(JIS Z8731)。
数式は、以下のようになっています。
:等価騒音レベル
:測定時間(t1〜t2)
:A特性音圧
:基準音圧(
これは、変動騒音の騒音レベルのエネルギー平均を意味していますので、次のように表せます。
:騒音レベルの一定時間間隔ごとのサンプル値
:サンプル値の総数
LAeqは、変動騒音に対する人間の生理・心理的反応とも比較的良く対応するので、一般環境騒音の評価量として世界的に広く使われています。また、LAeqの末尾の添え字は、測定時間を明示したい時に、測定時間を表示します。また、LAeqの代わりにLeqと表示されることもあります。

(*2) Ldn
(Day-Night average sound Level)
昼夜平均騒音レベル。昼間より夜間の方が騒音の影響が大きいという考え方に基づいて、夜間(22:00〜7:00)の騒音にエネルギー的に10倍の重み付けをして評価した1日の等価騒音レベルで、以下の式で表されます。 。
:昼夜平均騒音レベル(dB)。
:7:00〜22:00の間の等価騒音レベル(dB)。
:22:00〜7:00の間の等価騒音レベル(dB)。
Ldnは、1974年に米国環境保護庁(EPA)によって地域環境騒音の評価量として採用されました。また、米国ではNEFにかわる航空機騒音評価量として使われています。

(*3) NEF
(Noise Exposure Forecast)
航空機騒音評価のためにアメリカの連邦航空局(FAA)が開発し、1967年に発表されました。アメリカで用いられていましたが、現在はLdnに移行しています。
NEF=EPNL+10logN−88
で表されます。


財団法人:成田空港周辺地域共生財団